2010年7月19日月曜日

映画「ソウルパワー」1

ひさしぶりにすごい映画を観てしまった。音楽の映画だ。
「ウッドストック」とか「ロッカーズ」とか、そういうレベル。
映画「ソウルパワー」。



この映画は、1974年、ボクシングのモハメド・アリとジョージ・フォアマンの対戦がアフリカのザイール (現コンゴ共和国) で行われたことと関係している。

世紀の一戦がアフリカで行われる。スポーツ界のみならず、黒人対白人という図式においても大変刺激的な世界的にエポック・メイキングなイベントだった。その模様は、当時をリアルタイムで覚えていない人でも、レンタルビデオで確認できる。

それが、映画「モハメド・アリ かけがえのない日々」。
この作品、実は公開は1996年である。コンサートから22年後。
なんで22年かかったかも、簡単に説明できる原因ではなさそうだ。
とにかく22年という時代の変革期間が必要だったとしかいいようがないのが事実だろう。
そしてこの映画は見事、1997年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞を獲得している。絶対に観るべき名作だ。

それに比べると、世の中にあまり知られていない大きな事実が当時、もうひとつあったのだ。
ボクシングだけでなく、実は音楽の祭典も企画、実施されていたのだ。

それが「ザイール'74」と呼ばれる3日間にわらるコンサート。
ジェームス・ブラウン、B.B.キング、セリア・クルーズス、ビル・ウィザーズ、ザ・スピナーズ、ザ・クルセイダーズらとアフリカのミュージシャンたちがラインナップされ、競演するという音楽界においても歴史的なイベントだった。観衆は8万人だったという。

その様子を捉えたのが、映画「ソウルパワー」だ。
実にコンサートが行われてから35年経ってやっと編集、公開にこぎつけた。

「モハメド アリ かけがえのない日々」は人種差別を含むアメリカの社会的テーマを全世界に提示し、自由を世界に問いただした。

だが、「ソウルパワー」でのメインテーマは音楽だ。

アフリカン・アメリカン・ミュージシャンたちと、アフリカ、ザイールの人々のはじめての出会い、交流が描かれ、そこには喜びと戸惑いが交錯するといった混沌とした状況がドキュメンタリー・タッチで構成されている。

もちろん、ミュージシャンも闘っていた。ジェームス・ブラウンの劇中の言葉からは当時の彼らの人種差別における迫害や、長年の夢でもあったアフリカへの回帰の思いなど、同じく時代と闘う姿を映し出している。

当時、音楽の世界地図はどうだったのか?ソウルは、ファンクはR&Bは、アメリカン・ミュージックの立ち位置はどうだったのか?

「ソウルパワー」にはそれらのヒントがたくさん詰まっている。公開がもし終わったら、ぜひ、DVD化を願い、多くの音楽ファンが触れることのできる環境にしてほしいと願う1本だ。

そしてもう1本関係する映画がある。
これはさらに知られていない存在だ。
それが、映画「Fania All Stars Live In Africa」。

ファニア・オールスターズというのは、ニューヨークの音楽専門レーベル、ファニア所属のラテン・スターたちによるオール・キャスト、スーパー・サルサグループ。彼らが中心のライブ映像となっている作品。ちなみにファニア・オールスターズこそが、サザン・オールスターズの名前の由来らしい。

「モハメド・アリ かけがえのない日々」でも「ソウルパワー」でも満足できないラテンミュージックファン必見の映画だ。監督は、「モハメド アリ かけがえのない日々」同様、レオン・ギャスト。こちらは実は1974年、つまりすぐに当時公開されている。しかし、逆に、日本で手に入れるのが難しく、自分は何年か前に輸入盤で購入。ぜひとも手に入れたい。

この3本で、やっと、なんとか、1974年の「ザイール'74」の全体像が立体的に浮かび上がってくるのだった。
(つづく)
映画『ソウル・パワー』

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